2016年2月6日土曜日

平成と昭和は断絶しているのか。

おそ松さん、ヤングブラックジャック、コンクリート・レボルティオ。
2015年放映のアニメで印象に残っている作品だ。
これらに共通する点は、ずばり「昭和」。
軽く振り返ってみよう。

・おそ松さん
言わずと知れた、赤塚不二夫「おそ松くん」を原作としたアニメ。その作風はギャグをベースとした社会風刺、と見せかけたシュールレアリスム。サブカルネタにオマージュやパロディたっぷり、情報過多気味。良くも悪くも、社会影響力の大きい問題児。
「おそ松さん」をきっかけに、モノクロの昭和版「おそ松くん」を見たのだが、まあビックリ、物乞い(デカパン)や戦争孤児(チビ太)が普通にいて、普通に舞台装置として機能しているのだ。これ、平成生まれにはかなり衝撃的なことだ。そりゃあ、地元にはホームレスのおじさんやおばさんが堂々と地下通路に寝転がっているけど、「右や左の旦那様、お恵みを」なんて言わないもの。存在は認めつつも、なんとなく、「見えないもの」として扱ってしまっているのだ。五十代の親にこの話をしたら、昔は傷痍軍人が神社やお寺にいたそうな。一世代の間に随分と変わったのだな……。
我が家のジェネレーション・ギャップを埋めてくれているのが「おそ松さん」だ。下ネタや腐ネタをぶっこんでくるのが(親と見るときは)ちょっと困るが、その暴れっぷりは「もっとやれ」と言いたくなる。

・ヤング ブラック・ジャック
手塚治虫「ブラック・ジャック」の前日談的位置づけ。舞台は1960年代後半。大学闘争やベトナム戦争がガッツリ絡む。アメリカの公民権運動もやっちゃう。その時代の人々が持っていた暴力的なまでのエネルギーに唖然とした。そういう歴史を辿ってきていることは教科書や資料集を読んだから知っているけど(授業だと駆け足になる単元だ)、アニメで見せられるとかえって生々しい。

・コンクリート・レボルティオ~超人幻想~
秋クールに放映されていたのだが、あまり話題にならなかった作品。2期(2016年春クール)放映が決定したので、機会を捉えたら是非見てもらいたい。
現実世界とは異なる歴史をたどった舞台、人間の他に、超人や魔女、妖怪に宇宙人と雑多な存在が共存している。作品内では年号がポイントになるのだが、その元号は「神化」といい、現実世界の「昭和」とリンクしている。
テーマは、「正義/自由/平和」。安易な勧善懲悪モノになりがちなテーマを、よくぞここまで深みのある話に仕立て上げられたと思う。一つ一つは素晴らしい理念なのに、複数の勢力が入り乱れることによって、容易に三竦みになってしまう価値観。「正義/悪」「自由/抑圧」「平和/戦争」はそれこそ冷戦までは成立させることができていたが、現代では難しい。価値観が多様化した今だから描けたのかな、と思ったり思わなかったり。
各話で取り上げられる事件は、現実世界で起こったものが多いようだ。また、特撮ネタやオマージュ、パロディ満載らしいが、平成生まれでサブカルにわかの私にはほぼ分からない(さすがに最終話の広島のゴジラネタは分かった)。まとめサイトなどで元ネタを教えてもらってやっと合点がいくことばかり。少年心をくすぐりつつも、いろいろ考えさせられる。円盤を買おうか迷う、何度も見返したい作品だ。

さて。
平成と昭和は断絶しているのか。
昭和は敗戦という大きな出来事があったので、この問は相応しくないか。
それでは、問いを変えよう。
敗戦後の昭和と平成は断絶しているのか。

していないだろう。天皇こそ代わったが、国家体制に大きな変更はなし、一応戦争もしていない。
だけど、戦後70年を過ぎ、平成も四半世紀以上を経た今、なにか時代が変わってきている気がするのだ。平成世代が言うのも妙な話だが。
平成も28年になり、そろそろ若手クリエイターが台頭する頃だ。戦後を知らない世代、バブルすら知らない世代。日本人だって暴動することを知らない世代。爆発的なエネルギーを皮膚感覚で分からない、平成生まれが作る作品はどうなっていくのだろう。今まさに脂がのっている人たちは、昭和の人たちだろうが、彼らの後継者は果たして何を想い、何を作っていくのか。エネルギーの総量と実際に放つ量は減っていくのだろうか。

YBJとコンレボの露骨な「反戦・反米・反体制」が堂々と放映できるし、やりたい放題のおそ松さんも自粛する気ないみたいだし、日本のメディアももうしばらく大丈夫なのかな。


しかしまあ、アニメって教養を要求されるんだと思い知らされた2015年だった。
歴史にサブカルに、文学などハイカルチャー的な諸々。おそ松さんのF6に至っては声優ネタも仕込んできたし。CRただいまとかアロマ企画とか、ググって苦笑いしか出てこない小ネタもあるし、クリエイターの頭の中ってどうなってんだよ。



あー、ちなみに。
2015年、地味に好きだったのはスタミュ。最初はネタで見ていたけど、青春モノとして面白かった。
登場人物がみんないい人ばかりで不安だったが(捻くれ者やクズ、アクの強い人が好き)、爽やかボーイズばかりで一周回って全部受け入れられた。暁先輩だって、行動原理自体は、悪意もあってないようなものだし。理事長はいただけないが前面に出てこないし。
女子力高い優男の那雪が喧嘩っ早かったり、戌峰がマジで犬だったり、チャラ男の虎石が苦労人だったり、ラスボス感漂う辰巳が凄くいい人だったり、月皇と天花寺のくだらないやり取りだったり。ありがちかもしれないけど、丁寧で信念があっていいなあと思った。
そして、なによりも、音楽!キャラソンもミュージカル寄りの楽曲も、良かった。
2期、やってくれないかなあ……。