2015年11月14日土曜日

【考察】平成風昭和的世界観「おそ松さん」


2015年秋アニメの問題児、「おそ松さん」のOP曲「はなまるぴっぴはよいこだけ」が公式リリースされた。
あの音ゲーっぽい音楽とナンセンスな歌詞、そしてサイケデリックなPVで、中毒になった視聴者も多いだろう。私も、アニメは毎話OPを飛ばさずスマホもいじらずちゃんと見ているクチだ。
さて、気になる「はなまるぴっぴはよいこだけ」Full ver. だが……。

狂ってやがる。

いやホントに。TV ver. のナンセンスさはあくまで放送用ということか。パッと聞いて意味が分からないのに、歌詞をじっくり見ていくと、背中に冷たいものが走る。アニメの世界観を表すのがオープニング主題歌だとしたら、現在進行形で私たちが視聴している「おそ松さん」は、実は私(たち)が認識しているものとは全然違うんじゃないか。
ただのナンセンス/シュールギャグアニメだと思っていたけど、もっとキツイ、ブラックジョークのアニメな気がする。そしてそれは、見返せば第1話から周到に伏線や布石が準備されていたのではないか。

復習

というわけで、アニメ「おそ松さん」1クール目が折り返し地点に来たので、復習がてら振り返ってみる。
伝説()の第1話と、第2話以降に話を分ける。

第1話について。

DVD未収録とネット配信停止を発表、視聴者をアッと驚かせた問題作。
主に女性ファンのツボを見事に突きつつそれ自体をネタとするハイセンスさを見せつけつつ、これでもかとパロディを詰め込んだ二十数分間にはツッコミどころはたくさんあったが、ここでは『進撃の巨人』のパロディのみ取り上げる。

巨人と化したチビ太に、おそ松が「よう…27年ぶりだな…」と呼びかけるシーン。
視聴した当初、この「27年」は、「おそ松くん」アニメ2期放送開始の1988年から27年ぶりの放送を指していると思っていた。が、どうにも違和感が拭えない。というのも、その直後のチョロ松のセリフ「微妙なワードを使わないで!」と微妙に噛み合わないのだ。(え、年数がキリ番じゃないってこと?30年ぶりだったら良かったの???としばらく首を捻った)

そこでネットをふらふらとしていたら見つけた、「おそ松くんの最終回が後味悪すぎる件」。複数の2ちゃんねるのまとめサイトに載っているのだが、画像が正しければ「少年サンデー」に掲載された「赤塚不二夫『あのキャラクターは、いま!?』」によれば、どうやら六つ子をはじめ主要キャラクターはほぼ死んだらしい(チビ太は死ななかったようだが)。そして、「あれから27年もたったのか……」というセリフがある。
いささかこじつけめいているのを承知で書けば、アニメのチョロ松のセリフは、放送時期ではなく死亡時期を指している、と考えた方が自然だ。また、そう考えれば、アニメ2作目で10代だったであろう六つ子が現在20代であることにも整合性がある。
また、トド松の「大丈夫、(赤塚先生は)もう死んでいるから」というセリフ。これがただの不謹慎ギャグなのか、登場人物が既に死んでいることの示唆なのか。

余談だが、私は第1話のDVD未収録は最初から仕組まれたものだと思う。
著作権とか下ネタとかだったら、明らかに第3話の方がマズい(から実際に一部差し替えになった)、不謹慎ネタはフジオプロ側からの提案だったらしいし。
さらに、大方「おそ松くんの最終回が後味悪すぎる件」も関係者が意識的に流した情報だと思っている。そして、考察を促しつつ掌の上で踊らせようって魂胆なんだろう。フッ、大いに踊ってやるぜ。だから第1話の再配信をどうかお願いしやす!
DVDに収録される予定の完全新作アニメーション。この作品の世界観を提示するような話になるのだろう。なかなかにショッキングなものになるかもしれん。

第2話以降について。

BS放送で修正の入った第3話、一部のカラ松ガールがモンペ化した第5話など現実世界に 実害 影響を及ぼしつつ話が展開している。実に楽しいよ。

さて、アニメ「おそ松さん」はSF(すこしふしぎ)な手法で製作されている。

まずは、ベースとなる世界観がある。これは現時点では不明だ。
そして、固定された設定がある。松野家の基本スペック(家族構成、六つ子の性格など)や、主要キャラクター(含・聖澤庄之助)。

以上を前提とした上で、各エピソードが1話(あるいは1放送分)完結で繰り広げられていく。イヤミの栄枯盛衰っぷりや、デカパンがブラック工場の社長になったり博士になったり、大騒動を巻き起こしたエスパーニャンコが次の話では全く出なかったり、というのは(本来の意味とはややずれるが)「スターシステム」の描き方と見る。

……ここまで書いていて気付いたが、各エピソードは完結してはいるが、独立はしていなかった。おそ松が競馬に勝つエピソードやブラック工場など繋がりはある。もしかしたら、あのブラック工場は、ハタ坊が所有してデカパンが監督を務めイヤミが末端の社員でアルバイトを家畜の如く使役していたところなのかもしれない。そして、六つ子が脱走したからイヤミはクビになったのかもしれない。
ということで、第2話以降については保留。最終話まで全て見ないと分からない。今後に期待。


昭和64年/平成元年

ところで、平成生まれの私にとって、昭和は完全な過去だ。歴史の教科書の世界だ。

しかも、バブル崩壊後に生まれた世代。高度経済成長期を生き残った「古き良き日本」なるものが、泡銭のジャラジャラという音と共に破壊された後に、ノスタルジーと共に美しくも歪に再生産された「昭和ライクなもの」を昭和を知らぬまま消費している。つまりなにが言いたいのかと言うと、私にとって(そしておそらく私たちの世代にとって)昭和はファンタジーの世界なのだ。

そんな昭和を代表する漫画をリメイクした、アニメ「おそ松さん」。

随所に仕込まれるネタは紛れもなく平成のものだが、作品全体の根底にある世界観というか精神は、昭和である、と感じる。時折見せる、「理解不能」なギャグの一抹の不気味さは、平成にないものなのか、単に私が普段ナンセンスものを見ないせいなのか……。


と、このように薄らと感じていた不気味さが、「はなまるぴっぴはよいこだけ」の歌詞をきっかけに、一気に増した。
もうハッキリといってしまおうか。
私は、「おそ松さん」は「おそ松くん」と同一キャラクターではない、と疑っている。
フグを食べた時に世界線を移動したのか、デカパンあたりが作った身代わりロボットなのか、はたまた壮大な夢落ちなのか(だとしたら誰の?)、そこまでは分からない。
歌詞で繰り返される「新型ギミック」からして、新しく作られた仕掛け/機械なのだろうか。「時限式カラミティ(災厄・惨事・疫病神)」というのも気になる。


とか言ってー
こういう考察を一気に水の泡にするのがギャグ作品の恐ろしさよ……。
でも、今までの話を見る限り張った伏線はきちんと回収しているし、丁寧な作りだから、もう何があっても納得できる気がする。

ただ、カラ松が参謀役だというのは未だに分からん……ただの不憫な次男でしかない。
第1話の格好良いカラ松はどこにいったのだ。
むしろ、カラ松のキャラが違い過ぎて第1話が配信停止になった説。

もどれない?嗚呼 かえれない?嗚呼


今年の夏は江戸川乱歩没後50年を記念したアニメ「乱歩奇譚」もあったし、政治でも昭和以来のゴタゴタもあったし、なんとなく全体的に昭和回帰なんですかね。先行き不透明だしね。

アニメ「おそ松さん」。2クール決定おめでとうございます。
全25話で、どう話を着地させるのか、とても楽しみだ。
ブラックジョーク路線で行って欲しい、むしろバッドエンドでもいいくらいだと思ってる。
視聴者の心に傷を残すぐらい、ありきたりの良いお話なんかじゃない、振り切れた最終回が見たい。
だって、
「この世に要るのはよいこだけ」
なんでしょ。
あのクズニートたちやイヤミや扶養家族選抜するような親や人の頭や尻に旗をぶっ刺そうとする友達は「この世」に「要る」のかな。あはは。

BGM
# A応P「はなまるぴっぴはよいこだけ」
# [Remix]はーこーぴっぴはよいこだけ Full Version【おそ松さん】 by 亜九静

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